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広島市に在住の門徒さんのところにお参りに行ってきました。
ご主人は先日、御年90を迎えられ、ご夫婦で音楽の世界に長年いらっしゃいました。
奥様は近所の真宗寺院で開かれる「お経会」に歌の担当として月一回通っておられるそうです。
その際に、みんなで歌える「懐かしい歌」を毎月4曲用意します。
「お寺さん知らないの?若いわねぇ」と言われました。見れば、昭和25年「あざみの歌」大正9年「浜千鳥」大正4年「ゴンドラの唄」…
大正時代の歌は、ワルツ(三拍子)が多い印象です。なんだか足取りが軽くなりそうな、ルンルンになるようなリズムです。ということは、「せめて歌だけでもルンルンに」という厳しい時代を想像します。
さて、「懐かしい」というのは、過去の事実だけでなく、その時の自分の感情とか考え方も含めるように思います。
そういえば10年ほど前、父に代わってお参りをするようになったころ、久しぶりに父が法事でご当家に参った後日に伺った時、そこの奥様に
「この間、とても久しぶりに住職さんのお経声を聞きました。なんだかとても懐かしかった」
と言われて、衝撃を受けたことがあります。
私がどんなにお経を一生懸命読もうとも、この『懐かしさ』は手に入らない。そんな思いがして、読経の上手・下手へのこだわりから少しずつ離れることができるようになったように思います。