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浄土真宗 福泉寺

山門の掲示板

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役に立つ…
2025年05月14日 22時26分
祖父江省念師 1905年(明治38年)9月18日岐阜県生まれ。幼くして寺の小僧となり、まもなく節談説教僧としての修業を積む。その鍛え上げた声と絶妙の間、独特の節回しで親鸞聖人の一代記などを語り、説教の会はどこも満堂の賑わいとなる。自坊・有隣寺をはじめ全国各地で開かれた説教は最盛期に年間400回を数えた。俳優の小沢昭一氏や永六輔氏らもその説教に感銘を受け節談説教の魅力を広く世の中に伝えると、昭和40年代には「節談説教ブーム」が起きたほどであった。(有隣寺HPより) 有隣寺さんのHPには省念師の音声が残っているそうです。(クリック) さて、「住職さん、この言葉の意味が分からないのですが…」といわれることも、「たしかにそうですね!」という言葉も伺いませんので、きっと皆さまの頭の上を晩春の風と共に吹き抜けてゆくのだろうと思います…。 入院や介護で、誰かの世話にならなければならなくなった時「誰の役にも立てなくて、迷惑ばかりかけて、生きているのがつらい」とおっしゃる方がいました。 その人はその時、多分「そんなことないですよ。生きていればきっと誰かの役に立っているはず」と言ってほしかったのだろうと思いました。なので、その通りに申し上げました。 同時に私の心の中 「この方自身が、若く元気に働けていた時、入院や介護(もっと言えば、障がい者やLGBTQなどへの社会的支援)の必要な人を『負担だけかかる役に立たない人たちだ』という価値観で見てきたということになるのではないか」とささやきが聞こえてきました。 役に立つ…私にとっては厄介な価値観です。 実はその考え方が、自分の価値観を浅く狭いものにし、人への無理解を生じ、結局は自分を苦しめ、人も苦しめると思うからです。 「人のために生きる」 「人の役に立つように生きる」。 似ているようで、全く違いますね。 ね?
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永眠と仏教
2023年10月02日 17時18分
「安らかにお眠りください」。 生前、病気や様々なご苦労をねぎらって、「もうしんどい思いをしなくていいからね」との思いを込めて、このような心情・言葉が出ることは、当然のことです。 一方で仏教は、「涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)」といって、「真実に目覚めること」を目標にする宗教です。 したがって、残された人にとっては「安らかに眠れ」ですが、先立って行った人にとっては「いよいよ真実に目覚め、そのあかつきには、未だに目覚めぬあなたを護り導いていこう」ということです。 目覚めるだけならまだしも、なぜ、目覚めていない人を護り導く活動をされるのか。それは、目覚めの内容に深く関わっていきます。 目覚めの内容とは「わたしとあなたは、ひとつである(=ふたつに分けることが出来ない関係)」という「無分別の見方」であります。 私たちは、「好き、嫌い」「価値がある、無い」「正しい、間違い」「この世、あの世」という具合に、物事を分けて考える「分別」の世界を生きています。同様の論理で、「わたし、あなた」と分別している。そして、そのような認識の源には「煩悩(自己中心の世界観)」があるのです。 命が尽きるというのは、この煩悩の火が消える(これを「涅槃寂静=ニルヴァーナ」という)ことを意味するので、亡くなった人は、無分別の世界に生きる、すなわち、 「あなたがうれしい時はわたしもうれしい」 「あなたが泣けば、私も泣く」 という具合に、無分別の世界から働きかけてくれるのです。 私たちは「目を開けて眠っている」。これが仏教の見方なのです。
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いただきもの。
2022年07月09日 04時35分
この言葉を著された大峯(おおみね)顕(あきら)先生は、続けてこうおっしゃっています。 「この命は私の中で動いているけれども、私の所有物ではないんです。たまわった命です。誰のものでもないというのは、如来のものということです。ただの物質という意味ではなくて、人間の力ではない不思議なものからいただいた不思議な力です。(如来というのは、天地創造の絶対者という意味ではなく、私を生かす「働き」全般を指します。)   私は今、3人の子ども達の純粋な姿に心を打たれています。寝顔はもちろん、遊ぶ姿、怒り、泣き、日々の3人の姿を見ていると、幼い頃、私自身が受けた母の愛情、周囲の皆んなの愛情と重なるのです。しかし当時は応えるどころか、反発ばかりしていたため、そんな風に思い返すと涙が出ます。 この世で生きていくということは、「権利」「義務」「責任」と無関係ではいられません。だけど、「そもそも、生かされている私」を「とっても不可思議なことだ」として、今一度向き合ってみることは、生きることの根本的な意味において必要なことではないかと思うのです。